掲示板~彼方へ



カテゴリ:[ その他 ]


7件の内、新着の記事から10件ずつ表示します。


[8] 欠点のない生活

投稿者: 管理者 投稿日:2014年 3月 8日(土)12時11分54秒   通報   返信・引用

「言っておかなきゃいけないことがあるんだよ」彼女がよわよわしい声でいった。「ナワールがおまえさんを待つようにと言ったんだ、たとえ二十年かかろうとね。そしておまえさんを誘惑して力を奪う方法を教えてくれた。遅かれ早かれおまえさんがパブリトとネストールに会いにくることがわかっていたんだね。だから、そのチャンスに持っているものをぜんぶ取ってしまえって。ナワールが言うには、もしわたしが欠点のない生活をしていれば、この家にだれもいないときにわたしの力がおまえさんをここに連れてくるっていうのさ。そのとおりになったよ。みんなが出かけているときに来たもの。欠点のない生活が手助けしてくれたんだよ。だからあとはおまえさんの力を取って、殺せばよかったんだ」
「でも、どうしてそんな恐ろしいことをしようと思ったんだい?」
「わたし自身の旅におまえさんの力が必要だからさ。ナワールもそういうふうにしくまなければならなかったんだ。その相手というのはおまえさんでなければならなかった。わたしはおまえさんを知らないからね。わたしにとっちゃ、なんの意味もない男だからさ。なんの意味もないやつから死ぬほど必要なものを取ったからって、べつに悪いことはないだろう?ナワールがこのとおりに言ったんだよ」
「どうしてナワールはぼくを傷つけようなんて思ったんだろう?あんたも、彼がぼくのことを心配していたって言ったじゃないか」
「今夜わたしのしたことは、彼がおまえさんやわたしをどう思っているかってことには関係ないんだよ。わたしたちだけのことなんだからね。ふたりともナワール自身の一部なんだから、今日ふたりのあいだにあったことの目撃者なんかいないんだよ。けど、おまえさんはわたしが持っていない彼の何かを持っている。彼がおまえさんにあげた特別な力をね。わたしはそれが死ぬほど必要なんだ。ナワールは六人の子どもひとりひとりに何かをやった、と言っていた。わたしとしてはエリヒオには手を出せないし、娘たちからも取れない。となれば、おまえさんしかいないだろう。わたしはナワールがくれた力を育て、それは育ちながらわたしのからだを変えたのさ。おまえさんだって自分の力を育てたんだよ。わたしはおまえさんの力がほしかった。そのためには殺さなけりゃならなかったんだ。たとえ死ななくともわたしの呪文にかかって、そう望めば一生わたしの捕虜にしておけるってナワールが言ったんだよ。どっちにしても、おまえさんの力はわたしのものになるはずだったんだ」
「でも、どうしてぼくが死ぬとあんたの利益になるんだい?」
「死ぬのが利益になるんじゃない。力だよ。力をふやしたいからああしたんだ。それがないと、旅がひどいものになるんだよ。たりるだけの持久力がないからね。ラ・ゴルダが嫌いなのもだからなのさ。あの娘は若いし持久力もある。わたしは年をとっていて、いろいろな迷いや疑いをもっているんだ。ほんとうのことを言えばね、戦っているのはパブリトとわたしなんだよ。わたしにとって不倶戴天の敵はあんたじゃなく、パブリトなのさ。ナワールは、あんたの力があればわたしの旅も楽になるし、必要なものを手に入れる助けにもなるって言ってたんだよ」


P73




[7] くらべるもののない最高のもの

投稿者: 管理者 投稿日:2014年 3月 6日(木)14時09分50秒   通報   返信・引用

「女の人は自分の風がどれかってことを、どうやって知るんだい?」
「ただじっとして自分にも話しかけずにいれば、風のほうから見つけてくれる、そんな感じだね」
「裸で横になっていなけりゃいけないの?」
「そうすればもっといいけど。とくに恥ずかしがり屋はね。わたしは太っちょのお婆ちゃんだったから、それまで服を脱いだことなんてなかったんだよ。寝るときも着ていたし、風呂に入るときだってスリップは着ていたんだからね。風に太ったからだを見せるなんて、もう死ぬ思いだったんだよ。ナワールもそれを知っていて、賭けをしたのさ。彼は女と風の友情を知っていたけど、わたしはまどわされてわたしをメスカリトに引き合わせっちまったんだよ。
 あの最初の日にわたしの頭をまわしてから、ナワールはわたしがひとすじなわではいかないってことがわかったんだね、どうしていいかわからないって言ってたよ。つまり、まごついちまうのさ。わたしらはここにいるべきじゃないんだ。おまえさんはインディアンじゃないし、わたしは年をとった牛みたいなものなんだから。おまえさんがそのことに気がつかなければ、わたしたちは役に立たないんだよ。でも自分を見てごらん。何かが起ったにちがないんだ。
 もちろん、女は男よりももっともっと柔順さ。呪術師の力にかかったら、女なんかたやすく変わっちまう。とくにナワールみたいな呪術師の力にかかったらね。ナワールによれば、男の弟子はひどくむずかしいらしいよ。たとえばおまえさんにしたって、おまえさんよりあとにはじめたラ・ゴルダほどにも変わっちゃいないんだからね。女はもっと柔軟で穏やかだし、みんなひょたんみたいなんだよ。受け入れるだ。けど、なぜか男はもっと力を支配している。ナワールはこのことには納得しなかったけどね。彼は女はくらべるもののない最高のものだと思っているんだよ。それに、わたしが男のほうが上だと思っているのも、ただわたしがからっぽの女だからだ、と思いこんでいる。きっと彼のほうが正しいんだろうね。あんまり長いことからっぽだったんで、完璧っていうのがどんな感じだか思い出せないんだ。それで、もしわたしが完璧になることがあったら、それに対する感じが変わるだろうって、ナワールに言われたよ。けど、もし彼のほうが正しいなら、彼のゴルダだってエリヒオと同じくらいうまくできたはずなんだ。知ってのとおり、そうじゃないからね」
彼女の話の出発点となる前提がわからないために、わたしは流れ出すようなその話についていけなくなってしまった。とにかく、エリヒオやゴルダが何をしたのかまるで知らないのだ。



[6] 静かに気を楽にすれば

投稿者: 管理者 投稿日:2014年 3月 6日(木)12時41分34秒   通報   返信・引用

 ある日、彼の故郷の山に入ったときはじめて風に耳を傾けたんだ。するとそいつは直接わたしの子宮に入ってきた。わたしが平らな岩の上で横になっていると、風はわたしのまわりで渦を巻いていたんだ。そういう光景はあの日に見たことがあったけど、そのときはそれがわたしの上へきて止まったのさ。ちょうどお腹の上に鳥がとまったような感じだったよ。ナワールに服をぜんぶ脱がされて素裸にされたんだけど、風が暖めてくれてたんで寒くはなかったよ」
「こわくなかったかい?」
「こわいだって?恐ろしくてすくんじまったよ。風は生きていて、頭のてっぺんから爪先までなめまわすんだ。それからからだじゅうに入りこんできて、わたしは風船みたいになっちまったよ。そして耳とか、口とか、口じゃ言えないようなところから出て行ったんだ。もう死ぬかと思った。ナワールに岩に押しつけられていなかったら、きっと逃げ出していたね。耳もとでおちつけってささやいていた。だから静かに横になって、風のしたいようにさせたんだ。風がわたしに何をしたらいいか教えてくれたのはそのときだった」
「何をどうしろっていうんだい?」
「わたしの生活や、物や、部屋や、感情をさ。最初はよくわからなかったよ。そいつは考えている自分だろうと思った。ナワールが、わたしたちみんながそうなんだって言ってた。けど、おちついたら、わたしたちに話しかけているが何か別なものだってことがわかるんだ」
「声を聞いたの?」
「いいや、ちがう。風は女のからだのなかで動くんだ。ナワールの言うには、女には子宮があるからだそうだ。子宮の中へ入っちまうと、風はその女に元気をつけて何をしたらいいか言うんだ。その女が静かに気を楽にすればするほど結果もよくなるのさ。そうだねえ、自分じゃどうしたらいいかまるでわからないようなことができるってことにとつぜん気がつく、と言ってもいいだろうね。
 その日から、いつでも風がやってくるようになったよ。子宮のなかに入ってきて、知りたいことをなんでも教えてくれるのさ。ナワールは、最初からわたしが北風だってことがわかっていたね。区別は出来るようになったけど、ほかの風だと、あんなふうには話してくれないんだよ」



[5] 新しい方角

投稿者: 管理者 投稿日:2013年11月30日(土)11時28分58秒   通報   返信・引用

「ある日、わたしはひとりで家の前で」ドニャ・ソルダードがつづけた。「陽の光に当たりながらナワールにもらった櫛で髪をとかしていた。そこへ彼がやってきてわたしのうしろに立っていたんだけれど、こっちは気がつかなかった。そして急に顎をつかまれたんだ。彼はとってもやさしい声で、首の骨が折れるといけないから動くなって言うんだよ。そして頭を左へねじった。ほんのちょとだけどね。もうたまらなく恐ろしくなって叫び声をあげてなんとか手をふりほどこうとしたんだけど、ずうっと手を放してくれないのさ。
 やっと手を放してくれたときには、わたしは気を失ってしまって、それからどうなったのかおぼえていないのんだ。気がつくとちょうど今すわっているここの地面に横になっていたのさ。ナワールはもういなかった。もう恥ずかしくて恥ずかしくてだれにも会いたくなかったよ。とくにラ・ゴルダにはね。ずっと、ナワールにそんなことをされたことはなくて、ただ悪い夢を見ただけなんだて思おうとしたんだよ」
 彼女は話をやめた。わたしは何があったのかという説明を待った。彼女はぼーっとしたような感じ。いや、むしろもの悲しそうだった。
「何があったんだい、ドニャ・ソルダード?」わたしは抑えきれずにこう訊いた。「彼が何かしたの?」
「ああ。目の方角を変えるためにわたしの首をねじったんだよ」わたしがびっくりするのを見て、彼女は大声で笑った。
「あのね、ぼくのいっているのは、彼が・・・」
「そう。わたしの方角を変えたのさ」わたしがさぐりを入れているのにも気づかず、彼女は話をつづけた。「彼は同じことをおまえさんや他のだれにもしたんだよ」
「それはわかっている。ぼくにもそうしたよ。でも、なぜそうしたんだと思う?」
「そうしなければならなかったからさ。それがいちばんだいじなことなんだから」
 彼女は、ドン・ファンが必要不可欠だと考えている特別な行動のことにふれていたのだった。わたしはそのことについて人と話したことが一度もなかった。現にそのことについてはほとんど忘れかけていたのだ。わたしが弟子としての活動を始めたばかりのころ、メキシコ北部の山のなかで彼が小さな火をふたつおこしたことがあった。たしか二十フィートくらい離れていたと思う。彼はわたしをそのそれぞれからやはり二十フィートほど離れたところにいちばん楽な姿勢で立たせ、わたしの頭を押さえていた。そして、わたしを一方の火の方に向かせてわたしの前へまわると、首を左にねじり、肩を動かさずに目をもう一方の火に向けさせた。そして火が消えるまで、彼はそうして何時間もわたしの首をそのまま押さえていたのだ。新しい方角は南東だった、というより、ふたつめの火を南東にくるようにおこしたのだろう。わたしはそれを、ドン・ファンの不可解な行為のひとつ、無意味な儀式のひとつだろうと解釈したのだった。
「ナワールが、わたしたちはみんな、一生、眺めるためにひとつの方角をおし進めてゆくのだ、と言っていたよ」彼女は話をつづけた。「それは魂の目の方角になるんだ。そして年月が過ぎるとその方角も使い古されて弱く不快なものになって、それに結びついているわたしたちも弱くて不快なものになるのさ。ナワールが首をひねって、恐ろしくて気が遠くなるまで押さえていた日はね、わたしに新しい方角をくれたんだよ」


P44



[4] おわんはわたしの足の上に

投稿者: 管理者 投稿日:2013年11月30日(土)00時56分31秒   通報   返信・引用

「ナワールは人間じゃないんだよ」
「どうして?」
「ナワールはだれも知らないところからやってきた悪魔なのさ」
 それをきいてわたしはぞっとした。心臓がどきん、どきんと鳴っている。彼女にとってわたしほど話がいのある聞き手はいなかっただろう。とても興味しんしんであった。わたしはそこのところをもっとくわしく説明してくれと頼んだ。
「彼が触れると人が変わるんだ。それはわかるだろ。彼はおまえさんのからだを変えた。まあ、おまえさんの場合は、そうされたことさえわからなかったようだけど。でも彼はおまえさんの古いからだに入りこんで、そこに何かを入れたんだ。わたしにも同じことをしたんだよ。わたしのなかに何かを入れて、それがからだをのっとったわけさ。そんなことができるのは悪魔だけだ。そしてわたしは北風になって、恐ろしいものも恐ろしい人もいなくなったわけさ。けど、変わる前は彼の名前を聞いただけで気が遠くなるほどの弱い、醜いお婆ちゃんだったんだよ。もちろん、パブリトなんかなんの手助けにもならない。あれはナワールを死ぬほどこわがっていたからね。
 ある日、私が家にひとりでいるときに、ナワールとヘナロがやってきたんだ。ドアの所にいるのが聞こえたんだけど、まるでうろつくジャガーだった。思わず十字を切ったよ。わたしにとっちゃ、ふたりの悪魔なんだから。それでもしてあげられることがないかと思って出て行ったんだ。腹がへっているというんで食べ物を作ってやった。ひょうたんのおわんにスープをね。ナワールはあんまりうれしそうじゃなかった。わたしみたいに弱い女が作った食べ物なんか食べたくはなかったんだね。それで、おっちょこちょいのふりをしておわんを床に落としちまった。それなのにひっくりかえりもせずこぼれもしない。ナワールがわざとすべらせてわたしの足の上に落としたのに、一滴たりともこぼれもしない。ほんとうにおわんはわたしの足の上に落ちたんだよ。そしてわたしがからだをかがめて拾いあげるまで、足の上にのっかっていたのさ。それでわたしはおわんをまた彼の前に置いて、たしかにわたしは弱い女だしいつも彼を恐れているけれど、わたしの料理にはいい感覚があるんだ、と言ってやったんだ。
 まさにその瞬間から、わたしに対するナワールの態度が変わったのさ。おわんがわたしの足の上に落ちて、しかもこぼれないということは、力が彼にわたしを示したっていうことだったんだ。そのときはそんなことは知らずに、彼の態度が変わったのも食事を断ったことを恥じたからだろうと思った。彼の変化については何も考えなかったよ。けど、それ以来だんだんわたしに気をとめはじめて、ショールとか、ドレスとか、櫛とかいろいろ贈り物までもってくるようになった。なんということだろう、と思ったね。彼は女がほしいんだろうと思って恥ずかしくなったよ。ナワールには若い女がたくさんいるのに、いまさらわたしみたいなお婆ちゃんのどこがいいんだろう?最初はそれを着たいとも思わなかったし、贈り物のことを考えるのもいやだった。けど、パブリトに説き伏せられて着るようになったんだ。そしてそれまで以上に彼が恐ろしくなって、二人きりになるのがとてもいやだった。彼が悪魔のような男だってことや、自分の女に何をしたかってことを知ってたからね」
 わたしはどうしても口をはさみたくなった。ドン・ファンの生活で、女のことなどわたしはひとりも知らなかったのだ。
「だれのことだかちゃんとわかっているんだろう?」
「信じてよ、ドニャ・ソルダード、ほんとうに知らないんだ」
「しらばっくれちゃいけないよ。ラ・ゴルダのことさ」

P42
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呪術の彼方へ―力の第二の環

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<ul><li class="sonet-asin-label">作者: カルロス・カスタネダ</li><li class="sonet-asin-label">出版社/メーカー: 二見書房</li><li class="sonet-asin-label">発売日: 1978/01</li><li class="sonet-asin-label">メディア: 単行本</li></ul>

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[2] (無題)

投稿者: 管理者 投稿日:2013年11月30日(土)00時55分45秒   通報   返信・引用

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[1] 掲示板が完成しましたキラキラ

投稿者: teacup.運営 投稿日:2013年11月30日(土)00時52分29秒   通報   返信・引用

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